著者:友松はじめ
Pocket
LINEで送る

地域でいちばんピカピカなホテル

「おもてなし」や「ホスピタリティ」というキーワードを
よく耳にするようになってしばらくたちます。
 
 
著者は、ご自身が経営する四国の赤字老舗旅館を
ジネスホテルに業態変更し事業の建て直しを成功させた方。
 
 
そして、そのノウハウを使い、
傾きかけているビジネスホテルの経営権を取得し
次々と立て直す事業を展開しています。
 
 
しかも、その建て直し方法は、
ホテルのインフラも従業員も今までと変わらないのに、
1ヶ月で客室稼働率が8%から50%アップさせた事例をはじめ、
1年で黒字化させたという事例の話がゴロゴロと登場します。
 
 

「はじめに」を読んで、気になったことが一つ。

「はじめに」を読んで、気になったことが一つ。
ホテルのインフラもスタッフもそのまま引き継くところなんですが、ホテルのインフラをそのまま使うというのは理解できます。
居酒屋でも「居ぬき」っていって、潰れたお店の施設をそのまま使って、経営者だけがわかってオープンさせることがありますから。

居ぬきのときは、もちろん経営者は変わるし、お店の名前も変わるし、働く人もガラッと変わります。当然です。
普通だったら、業績が悪かったのは、前経営者とスタッフ原因だと考えると思うんです。だから、スタッフは一掃して、新規にスタッフを募集して再スタートする。
そうしないと、古いスタッフが抵抗勢力になると思うんです。

しかし、本書の著者である宝田社長は、負の遺産かもしれない、既存のスタッフを辞めさせることなく、そのまま働いてもらうスタイルをとります。

そして、傾いたホテルを建て直しているわけです。
設備も一緒、スタッフも一緒。
でも、一年で黒字化。

なぜ?
ホテルが傾いた原因の一つでもあるスタッフがそのまま残る。
しかも読んでいると、みなさんお客様に喜んでもらうために自分から進んで、楽しんで仕事に取り組んでおられます。

宝田社長率いる、川六グループは、経営権を得たホテルでどんなスタッフ教育をしているのか?スタッフにどんな教育をしたのか、そこにとても興味をもって読みました。

まず、業績を上げるホテル、ホスピタリティの高いホテルといえば、クレドを掲げる「ザ・リッツ・カールトン」ですが、このホテルにもリッツのようなクレドがあるのだろうと思いました。

でも、クレドのようなものはありませんでした。

クレドは無くても、スタッフの接客はすばらしく、リピート客は増え、お客様はスタッフの顔と名前を覚えているのだそうです。

スタッフもお客様に喜んでもらおうと日々、お客様の要望の先を読むサービスを行っていました。

お客様の要望を先読みして行うサービスって、
これって、
リッツ・カールトンと同じじゃない?

ありがとうがスタッフを変えるアンケート

川六グループのビジネスホテルでは、
お客様にアンケートを書いてもらい、ホテルと自分の評価をしてもらう、そんな仕組みがあるそうです。

笑顔でお客様にアンケートの記入をお願いし、チェックアウト時にアンケートを返してもらう。そして1ヶ月後には、集まったアンケートを回収、スタッフ一人ひとりの査定に反映させる仕組みになっていました。

最初は自分の評価のためにアンケートを集めるという動機であっても、お客様からのありがとうの声をもらうことで、お客様にもっと喜んでもらうにはどうすればいいか?という思考に変わるそうです。

アンケートの回収も、最初は返してくれたら飴玉やサービス券やなどなど特典を用意していたのですが、最終的にはスタッフさんが笑顔でアンケートをお客様に渡し、返却をお願いするのが一番アンケートの回収率があがったそうです。
物じゃない、心と心のやりとり、お客様も物じゃなく人の心に反応するんですね。

社訓やクレドじゃないけど、徹底された3つの方針

川六グループでは、掃除と電話と挨拶を徹底することを掲げていました。
社訓とかクレドのようなものはそれくらいです。

社訓やクレドのようなものは本書を読む限りではありませんでしたが、まるでリッツ・カールトンのスタッフのように、お客様に喜んでもらおうとする行動をスタッフ一人ひとりが自発的にとっていました。

なぜ、いままで出来なかったスタッフが
川六グループの傘下になってできるようになったのか?

ホテルの経営が傾いたのは、
ホテルのインフラでもスタッフに問題があったわけでもなく、
トップが原因。

「社長、ホチキス買っていいですか?」
は、ないわ~。

川六グループに変わる前の経営者は、小さな事務用品でさえケチり、従業員からの改善提案もことごとく却下していたそうです。かわいそうに。

そして、スタッフは、何を言っても聞いてもらえない、何を言っても変わらないということで、やる気を失い、発言することを止めてしまいます。
そして経営も傾く。

宝田社長は、建て直しに入る前に、必ず建て直し先のスタッフ一人ひとりと面談をするそうです。

そして、川六グループは、
・必ず建て直しを成功させていること
・川六グループが目指すビジョンやミッションを話し
・きちんと評価をすること

を伝えるそうです。

クレドや社訓のようなものが無いけれど、どうして既存のスタッフが生まれ変わったように、ホテリエとして素晴らしくなるのか?

これって、
ブレない宝田社長がクレドじゃない?
と本書を読み終わって思います。

まとめ

会社はもちろん、働くスタッフで変わるわけですが、
スタッフを前向きにも後ろ向きにも変えることができるのは、
経営者・社長です。

ホテルのインフラは変わらない。
はたらくスタッフも変わらない。

数ヶ月前までは赤字で潰れかかったホテルが、
経営者が変わっただけで黒字になる。
これって、問題はトップであったことは明らか。

「社長は決定する人で、社員は実行する人である」

スタッフは会社に雇用されているわけですから、自主性を持って働くといっても何もかも自由にできるわけではありません。
社長の決定を着実に遂行するのがスタッフの務めです。

それを踏まえたうえで、川六グループではスタッフの自主性を大いに認めています。

もっとこうしたほうがよくなる。という提案をどんどん会社に提案し、すべて認められるわけではないけれど、そうやって社長が決めたことを現場ではもっとよりよく遂行できるために、現場からどんどん上げる。上げることも査定に反映されるそうですが、そこが目的ではないスタッフがどんどん育っているそうです。

会社も良いと思う改善提案はどんどん採用しているそうで、見違えるように環境が変わって行っているそうです。

今は、あのバブルの時代と同等の景気なのだそうです。
その実感は、私には感じられませんが、たしかに求人に関しては、現在売り手市場になってきています。

少し前までは、気に入らないスタッフがいたら、職場で少しずつ追いこんで自主退職へ追い込む方法が通用した時期もあったかもしれませんが、優秀なスタッフというのはさらに今からの時代、見つからなくなってくるのではないでしょうか。

もとからいるスタッフをここまで再生させてしまう川六グループの宝田社長の本、読むべき人は、ホテル業以外にも多いように感じます。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加