著者:清水健一郎
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tarento

人財。
この言葉が最近頻繁に使われるようになった背景には、会社の財産として人がいる、という考えに社会が移行してきたからだと思います。

そして、それに伴い、人財育成の重要性も、これまで以上に認知されてきているように感じます。

そこで今回は、リッツの事例も交えて、人財育成の際の大切な考え方をお伝えしたいと思います。

タレントを発掘するQSP(クオリティ・セクション・プロセス)

リッツ・カールトンには、独自の人財選択の時に活用されるQSP(クオリティ・セクション・プロセス)というものがあります。
これは、その人の人間性に焦点を当てて、顕在的、潜在的なタレントは何かを見定めようとするもの。

具体的にいうと、直接面接前の電話面接で、人事担当者の質問に答えていくやり方です。
私も経験させていただきました。

例えば、

・ホテル経験のないあなたがVIPを接客することになりました。あなたならどうしますか?
・職場の仲間とどんなチームを作りたいですか?

電話面接の際、緊張していたこともあり質問をハッキリと覚えてはいませんが、この様な質問でした。

リッツの前提として、その人の本質的な人柄が大切、というものがあるのでしょう。
スキルや技術はいくらでも身に付けることができる。
しかし、本質的な人間性の部分は、子供時代からの環境であったり積み重ねで醸成されるもの。だからこそ、ということですね。

入社時の私を振り返ると、こういったものを持ち合わせていたか、少し心が痛い気もしますが、当時の私の同期達は持ち合わせていた事は確かです。

ちょうど、高野氏の「絆が生まれる瞬間」の中に、わかりやすい記載がありましたので、ご紹介します。

先ず仕事の基本を身につけさせるために、マニュアルを徹底的に繰り返させ、そして、会社のビジョンや哲学、理念に対する理解を深めます。
・サービスの本質とは何か。
・ホスピタリティの原点とは何か。
・会社が社会に生み出すべき価値とは何か。
・自分が果たすべき本当の役割とは何か。
そうすることで、基本は忠実に守りながらも、自分の感性を活かした表現方法が生み出され、最終的には個性豊かな自分独自のサービスの世界が確立される。

よくわかる話ですね。

ここで、私がリッツ・カールトン在籍中に、基本を覚え「サービスの本質とは何か? ホスピタリティの原点とは何か?会社が社会に生み出すべき価値とは何か?自分が果たすべき本当の役割とは何か?基本は忠実に守りながらも、自分の感性を活かした表現方法
とはなにか?」を毎日の様に考え先輩サービスパーソンと熱く語っていたエピソードをご紹介します。

それは、ロビーラウンジでの紅茶のサービス方法についてです。

たかが紅茶。されど紅茶。

紅茶好きの方は、ピン!と来られた方もいらっしゃるかもしれません。

実は、紅茶のサービスの仕方、楽しみ方というのは人それぞれなのですが、様々な紅茶の楽しみ方、提供の仕方は長年論争になっているほどなのです。

例えば、

■ミルクティーのミルクの温度も3パターン(冷、温、熱)どれにするか?

と、言うものがありますし、

■ミルクティーのミルクを入れるタイミングは、紅茶を入れる後なのか?先なのか?
■紅茶のカップは温めて出すのか、常温のままでお客様にお出しするのか?
■ロイヤルミルクティは日本で作られたものだし、メニュー表記はどうするか?

などなど、紅茶の話をしだすとキリがなくなってしまうほど、色々なものがあります。

さすがにすべてをお話しすると、長くなりすぎてしまいますので、また別の機会にするとして、ここでは一つ、紅茶カップの話をさせていただきます。

お客様に提供する紅茶カップは紅茶が冷めてしまわないように温めてお出しする。と考えるサービスパーソン(私)がいれば、リッツ・カールトンは本場イギリスのアフタヌーンティーの楽しみ方を提供し、楽しんでいただきたいから常温の紅茶カップでサービスする。

そもそも、英国のアフタヌーンティーとは、長時間楽しいおしゃべりをしながら楽しむものであるため、わざわざあらかじめ紅茶のカップを温める事などしない旨をお客様に説明し理解を深めていただいて楽しんでいただきたい。
と、考えるサービスパーソン(先輩)もいます。

高野氏の言う

「サービスの本質とは何か? ホスピタリティの原点とは何か?会社が社会に生み出すべき価値とは何か?自分が果たすべき本当の役割とは何か?基本は忠実に守りながらも、自分の感性を活かした表現方法とはなにか?」

を、私達二人とも真剣に考えて答えを探していました。
二人とも大正解なのです。

最終的には職場の多数決で、軍配は先輩にあがりました。

このエピソードのおかげで、私達は紅茶の歴史、楽しみ方、抽出方法、紅茶サービス技術、それらを伝えるための伝える技術のレベルが格段に上がった事を実感する事ができました。

タレントは原石

高野氏は言います。

その両方が磨かれて初めて、相手(お客様)のことを感じる力が身についてきます。そうしてようやくサービスを超える瞬間の意味が判るステージに立つことができるのです。

つまり、タレントは原石であり磨かなければ、輝きを放つ宝石にはならない。

私は自身の経営から、会社、経営者は原石を見つける努力だけでなく、原石を磨くスキル、努力も必要だと痛感しています。

原石を磨くためのものが、リッツではクレドであり、原石を見つける基準もまたクレドだったと思います。

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