著者:清水健一郎
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思いやりは、日本の素晴らしい特徴。
海外の方もよく驚かれていますよね。そういったニュースは、直接は関係ない人間でも嬉しくなります。

私たちの日頃からの何気ない所作にも「人を思いやる」と言う気持ちが含まれていたりします。

しかし、そんな一人一人の小さな所作も、それが10人、100人・・・と規模を大きくして考えてみると、やがて社会に繋がっていると気づきます。街中を歩いているだけでも、そんな「人を思いやる」所作が見えてきます。

そんな所作の例として、著書「絆が生まれる瞬間」の中ので、高野氏は、「傘傾げ」と言う所作を紹介されています。
傘をさいした者どうしが、すれ違いざまにお互いの傘が邪魔にならないように、お互いが傘を少し斜めにする所作です。

そんな、日本の美しい所作が近年では失われつつあるのでは?
と、高野氏自身、東京の街中を歩いて感じたそうです。

たった2・3歩がプロかアマかを分かつ

実は、私も最近、そんな所作で気になる事がありました。
それはワインの試飲会でのことです。

飲食業従事者つまりプロのサービススタッフだけでなく、最近は一般のお客様もワインの試飲会に参加しておられます。

試飲会では、プロか一般の参加者かは、一目瞭然で分かってしまいます。

おそらく一般の皆様は、ワイングラスの持ち方や、グラスに入ったワインの回し方、ワインの試飲後のコメントなどでプロかアマか一目瞭然に分かってしまう。と、思われがちですが、全くと言っていいほど違います。

では何が違うのか。
それは、周囲への配慮、心遣いです。
まさに高野氏の言う「人を思いやる」所作なのです。

一般参加者の方々は、担当者に試飲用のワインをグラスに注いで貰って、すぐグラスを回してワインを空気に触れさし、試飲して各々のコメントをしています。

では、プロはと言うと、注いで貰って一言「ありがとうございます」そして、プロとアマの大きな違いは、その場で試飲せずに2.3歩さがって試飲をするのです。
なぜなら、ワインを注いでいただいて、その場で試飲をしてしまうと、次に試飲のために並んでいた人の妨げになるからです。

このたった2.3歩がプロかアマかを見極める基準になるのです。

時にプロでもできない人もいますが、プロのサービスパーソンであれば、やはり、周囲の配慮に気を配るべきなのです。

まとめ

高野氏は、そんな心配りができない背景には、子供の頃からの社会との絆、繋がりが薄くなっている現代の実態を指摘されています。
自動販売機やコンビニ、銀行、ファミリーレストランなどでは、合理化と言う名のもとに「非接触サービス」が増え、人と人が交流する機会が少なくなってきた事で、社会との絆を作ることが苦手な人が増え、いつの間にか「自分さえよければ」と言う社会を作っているのではないか?

と、指摘されています。

この部分には、私も思わず、うんうんと、うなずいてしまいました。

社会の絆を作る機会が、小さな所作の中にすら隠れている事にこの著書に教えられたように思います。

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